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きのこ面白情報

【きのこ面白情報】フレンチレストランオーナーシェフ 内堀篤

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皆さんご存知のとおり、キノコってとても美味しいですよね。
日本が誇る栽培の技術が確立されてからは、いつでも手に入れる事ができる、
とても身近な食材です。

これもホクトさんを始めとする、キノコ生産者さんたちの努力のおかげです。
そして、美味しいだけでなく、ヘルシーな健康食品としても
その地位は揺ぎ無い、私たちの味方といったところでしょうか。
でも、それだけではないんです。

キノコは私達に、いろんな事を教えてくれます。
私はこれまでに、多くの事を学ばせてもらいました。

フランス料理の世界に入り、外国から空輸された天然キノコたちに、触れる機会を得た若かりし頃…
まだ、キノコの学習を始める前の私は、初めて見るそのキノコたちを
日本産のキノコとは異なるものだと思い込んでいました。
のちにそれは、間違いだと知ることに…

二十代の中頃。
とあるフレンチレストランのシェフを任された私は、
自分の世界を確立することで必死でした。

そんな時に、偶然出会った日本のポルチーニ達。
今思えば、この出会いが私の人生を変えました。
その時から、キノコの魅力にとり付かれ今日に至ります。
天然キノコを採取し、フランス料理に仕立て、お客様に喜んで頂きたい。
その思いが今も私の原動力です。

あの日から20年あまりの月日が経ちましたが、「未だ熱冷めやらず…」と言いますか
ますます、その深みにはまっております。
なぜなら、学ぶ事が多すぎて、全く退屈しませんので。

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安定してキノコを採取するためには、たくさんの事を知る必要があります。
広い山の中、闇雲に歩いても憧れのキノコには会えません。
樹木のこと、地質のこと、温度変化がキノコに与える影響や雨の降り方など、
沢山の知識と勘を働かせて、初めてキノコを得ることができるんです。

そして、山は野生動物達の居住地なので、彼らの生態についても学ばないといけません。
知識を持たず、勝手な振る舞いをすると事故が起こります。

軽い気持で山に入り、野性のクマに追いかけられ、逃げ切れず対決する羽目に…
マツタケの香りに誘われ、匂いをたどると、いつの間にか崖にちゅうぶらりん…
ロープを跨いだつもりが、マムシだった。 ふりかえると飛び掛かられる寸前…

など、いろんな体験をしましたが、語りだすと長くなるのでまたの機会に致します。
そのような目に遭わないために学習が大切です。
そして、もちろんキノコ自体の事も…

日本国内1万2000種類以上存在すると言われる、天然キノコたち。
その2/3はいまだ未知種と言われています。
天然キノコに明るい方ほど、目の前の天然キノコの名前を簡単には告げません。
なぜなら、肉眼だけでは断定できない種が多いからです。
同じ様に見える二つのキノコ。
でも、詳しく調べたら別種だった。というのはよくある話です。
なので、食用にする為のキノコの目ききは、しつこいほど慎重に行う必要があります。

私も師匠の指導の下、目ききの修行をしましたが、お客様に自信を持ってキノコを
ご紹介できるようになるまでに10年の月日が必要でした。
でも、その10年が楽しくて…
当時、休日の99%はキノコ採取に費やしていましたから。

「明日は、憧れのあのキノコに会えるんじゃないか!」
「あの山の斜面には、どんなキノコがあるんだろう?」
出向いたことの無い山に思いを馳せ、想像に酔いしれる…
こんなに心躍る楽しみは、他にはありませんでしたから。

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そして幸運にも望んだキノコに出会えたら、次は料理ですね。(当然、食用キノコのみです)
山の神様が与えてくれたキノコたちを、どう昇華させるか。
そのポテンシャルを最大限引き出すにはどうすべきか。
食べ比べてみると、それぞれ味わいが違うんです。

フランス料理という枠の中で、どう表現する? 
それをキノコに尋ね、教えてもらっています(笑)

一言でキノコと言いましても、その特徴は様々。
初めて料理する種の時は、その個性を知るためにさっとソテーし、試食します。
その結果が、例えば、「うま味が強いが固い」でしたら
「柔らかくするために煮込んでみよう。でも、うま味を逃がしたくないから
煮汁は濃度のある液体で…(液体に濃度があると、煮込む素材から味の流失が少なくなります)」
と、いった感じでキノコの特徴にあわせて、料理を変化させていきます。
パズルを解くのと似ているかもしれません。
その過程が、「キノコとの対話」だと私は思っています。
様々な個性を持つ「キノコの魅力」をどれだけ引き出せるか。
それは勝負でもあるんです。自分と…

食物繊維が豊富でヘルシー、そのうえ旨味が強く、味のバリエーションも
豊富なキノコ。
今の時代のニーズにぴったりの素晴らしい素材です。

あと、もう一つ。
キノコを愛する皆さんとの「人の輪」が大好きです。
「キノコが好き」その思いだけで、初対面でも旧知の間柄のように話が
できるって凄いことだと思うんです。これもキノコの力です。
そしてキノコへの造詣が深い方は、心豊かで謙虚な方ばかり。
自然の中で人間が知っていることは、未だ僅かだとキノコに現実を
突きつけられるからですね。そんな皆さんとの話は、とても楽しく勉強になるんです。

尊敬して止まない恩師の皆さんに巡り合えたことも、私の財産です。
皆さんに、いろんな事を教えて頂きました。
その中でも、キノコを愛するフランス料理人「恵比寿マッシュルーム」の
山岡昌冶シェフには、本当にお世話になりました。
「料理とキノコ」 愛するものが共通ですと、いつまでも話は尽きません…

「キノコを語る」というより、長ったらしい自己紹介になってしまったような
気もいたしますが、これからもキノコ道をひたすら進んで行きたいと…
皆さん、キノコをたくさん食べましょうね!

内堀さん、あなたにとってのきのことは?
「沢山の刺激を与えてくれる人生の先生」です

chef
内堀篤
1968年長野県上田市出身
数々のレストランで勤務後
2001年 世田谷区 ラビュットボワゼ 副料理長
2003年~2006年 恵比寿 Mushroom 副料理長兼キノコ部長
キノコ部長という役職はそれまで存在せず、内堀のキノコ狂いに呆れた山岡シェフにより作られた役職、その職は未だ解任されておらず現在も継続中。
2011年 軽井沢 Eburiko オープン   オーナーシェフ
日本菌学会所属  信州きのこの会所属
軽井沢 Eburiko http://www.eburiko.com/index.html

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