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きのこ面白情報

【きのこ面白情報】とよ田キノ子さんコラムVol.29 100年の時を越え輝き続ける「ひとよ茸」

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こんにちは。
とよ田キノ子です。

長野県の諏訪湖畔にたたずむ北澤美術館。
所有しているアール・ヌーヴォー期のガラス工芸作品約700点は世界屈指のコレクションとなっています。
開館30周年を迎えた本年は、展示室のリニューアルを記念し「ベスト・オブ・ザ・ベスト展」を開催中。
アール・ヌーヴォーを代表するフランスのガラス工芸家、エミール・ガレの傑作とともに、
その原画や制作下図などの貴重な資料もあわせて展示されています。

エミール・ガレは、工芸の改革者であると同時に植物学者でもありました。
“Ma Racine est au Fond des Bois”(わが根源は森の奥にあり)という言葉を残しているように
自然を愛し、自然の中に息づく植物や小さな昆虫たちなど、命のきらめきをそのまま作品に落としこんでいます。
そのモチーフの中には、もちろん「きのこ」もありました。
ガレの代表作であり、最晩年の作品「ひとよ茸ランプ」です。
この作品は成長過程の異なる3本のきのこからなっており、
それぞれ人生の幼年期・青年期・壮年期を喩えられていると言われています。
モチーフとなっているヒトヨタケは、名前の通り一夜で溶けてしまう儚いきのこ。
そして、自然界における分解者であるきのこは生物の「死」を「生」へと繋げる存在。
そのような消滅と再生を繰り返すきのこの姿が、
死を予感していたガレ本人と、ガレの作品に共通するテーマ「生と死の輪廻」とが重なり、
この作品が生まれたと思うととても感慨深くなります。

ガレが生きた19世紀のフランスは、ジャポニスム(日本美術ブーム)全盛の時代でもありました。
ジャポニスムは画家や作家たちに多くの影響を与えましたが、ガレも例外ではありませんでした。
自ら膨大な量の日本の美術品を蒐集し、葛飾北斎の図案を転用した作品も残されています。
そのように浮世絵や水墨画に影響を受けたガレは、うつろいや儚さといった日本人の持つ自然観・美意識に共感し、
日本美術からのアイディアを自分の作品に取り入れ、西洋的表現と融合を試み、昇華させていきました。
それは「ナンシーに生まれた日本人」と評されるほどだったそうです。
来年、ガレの没後110年を迎えますが、一世紀を超えた今でもガレの作品が私たち日本人の琴線に触れるのは
そういった日本人の美意識を感じさせるからなのかもしれません。
時は晩秋の候、ガレのように秋の哀れを感じながら、ひとよ茸の光りに照らされてみるのも一興。
ガレの作品を体感し、しみじみと静かな秋を過ごされてみてはいかがでしょうか。

■北澤美術館 開館30周年記念特別展「ベスト・オブ・ザ・ベスト展」
2013年10月21日(月)〜2014年3月31日(月)

【次回コラム予告】
菌友をつなぐコラム、7人目は 菌類研究者・白水 貴さんです。
菌類研究者の目から見た「普通のきのこ」と「立派なきのこ」とは?

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とよ田キノ子
アートディレクター、グラフィック&ウェブデザイナー、きのこグッズコレクター。
2007年に“キノコ病”を発症し、以後「とよ田キノ子」名義で活動を開始。
キノコグッズコレクションの展示や、キノコをモチーフにしたイラスト作品展、
キノコイベント等を開催。
2011年9月、グラフィック社より出版された『きのこ(乙女の玉手箱シリーズ)』を監修。
日々、キノコの魅力を伝える“胞子活動”を行っています。
信州きのこの会会員。

とよ田キノ子さんウェブサイトはコチラ

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