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トレンドコラム
Vol3

食だけじゃない、四季を楽しむ和食の魅力

食べることは人間にとっての根幹です。それだけに、料理や素材、調理法だけでなく、「食」に関わるさまざまなものが各国の「文化」として育まれてきました。今週の「きのこで菌活。」コラムでは、乾燥する冬の時期に美肌づくりに役立つきのこ料理やその栄養素ついてお届けしていますが、トレンドコラムで「菊乃井」3代目主人・村田吉弘さんが教えてくれたのは、日本食の魅力のひとつである四季を大切にすることと、そのために「器を大切にする」ということです。焼き物の収集家でもある村田さんが語る“和のしつらえ”をご紹介します。

 

—————— 教えてくれたひと ——————

村田 吉弘さん

村田 吉弘 (Yoshihiro Murata)

1951年、京都・祇園の老舗料亭「菊乃井」の長男として生まれる。大学在学中にフランス料理修行のため渡仏したのち、日本料理の道を選び帰国。大学卒業後、名古屋の料亭で修行し、76年に「菊乃井木屋町店」を開店。93年より3代目菊乃井主人となり、これまでにない柔軟な発想の料理を提唱、日本料理の真価を世界に伝える活動にも尽力する。http://kikunoi.jp/kikunoiweb/top

 

日本の「四季」を味わうことが日本人のアイデンティティになる

 
日本料理アカデミー理事長、一般社団法人和食文化国民会議副会長、日本食・食文化の普及検討委員……。「菊乃井」3代目主人として腕を振るいながら、日本食を維持・継承していくためにさまざまな活動に携わっている村田さん。その理由は、日本が文化的なアイデンティティを取り戻すためだと言います。
 

村田 吉弘さん

「ユネスコ無形文化遺産に登録されたことで『日本食が世界に認められた』とみなさんは思っているけど、違うんです。『遺産』とは、つまり保護せんと滅びるよっていう話なんですよ。だから私は料理人の育成もするし、食育もするし、学校給食にも関わっているんです」
 
日本の四季の情感を映し込み、素材の持ち味を生かした日本食。日本で育まれた食文化を通じて、日本人としてのアイデンティティを育むことが重要なのだそうです。でも、四季を楽しんだり、素材の持ち味を活かすというのは、日本食だけのものではないといいます。
 
「じゃあ『四季の情感』がフランスにないのかというと、そんなことはない。鹿肉のローストにジロール茸を合わせ、スグリのジャムが添えてあると、フランス人は『まるで秋の森を歩いているようだ』って思うんです。でも、僕ら日本人にはその感覚はわからない。同じように、日本料理で紅葉の葉や銀杏を料理に添えても、彼らは『きれい』と思うかもしれないけど、日本特有の季節感は伝わらへんな」
 

 
「素材の持ち味を生かす」ということについても同じで、そもそも、素材の持ち味を大切にしていない料理というもの自体が存在しない、と村田さん。
 
「例えば僕が、マルセイユでぴちぴち跳ねる魚を見たら『しまった、わさびをもってくるべきやった』って思います。でも、晩になったら、魚をくたくたに煮込んだブイヤベースが出てくる(笑)。それは、彼らがその土地で素材の持ち味を最大限に生かした結果生まれた、500年前から名物なわけです」
 
四季の巡る国で、文化の程度が同じなら『四季の情感』はそれぞれの国に独自のものがあり、それぞれの国で大切にされている。だからこそ、四季ごとの日本料理を味わうことは、自分たち独自の食文化を大切にすることにつながります。
 

季節に合わせて食器を使い分けてもっと豊かな食卓に

 
また、料理だけでなく、たとえばフランスでは5月には旬のアスパラを楽しむための専用のお皿があるなど、季節に合わせて食器を変えるのも食文化のひとつ。日本食をもっと楽しむためには、春夏と秋冬、年に2回は器を変えるといい、と村田さんは言います。
 
「京都では、夏と冬で食器はもちろん、建具から変えますからね。お正月にだけ重箱や漆椀を出したり、行事に合わせて食器を変えるのも大切ですね。でも、四季ごとに変えるのは難しいと思うので、おすすめは、年に2回変えること。夏は朝顔型に開いた薄手の石もんの茶碗、冬は温かみを感じる土もんの茶碗。」
 
洗うのに都合がいいからと1枚のプレートに料理を盛りつけることがありますが、それでは料理が混ざって味が分からなくなったり、トレーでは“持って食べる”ということが難しいため、器を正しく持つ習慣がつかず“犬食い”など行儀の悪さにもつながりかねない、と村田さん。
 

茶碗

 
「たとえば、コーヒーカップには持ち手が付いていますよね。でも、日本の湯のみにはない。日本人は、口にする前に、手で温度を感じたいんやな。温度によって飲み方も変わるから、事前に知りたいわけ。茶碗も同じで、一人ひとり食べたい量が違うから、個人用の茶碗があって、それぞれの箸があって……」
 
一人ひとり専用の器とお箸があって、季節ごとに使い分ける。1枚のプレートを使い回すのではなく、茶碗に小鉢、汁椀と、料理に合わせて最適な器を揃える。それも、日本食の楽しみ方のひとつ。
 
「僕がカミさんをもらうとき、婆ちゃんがこう言ったんです。『自分の茶碗てどんなって聞いてみぃ。夏はこんなん、冬はこんなんって言うたらOKや。自分のはこんなんやって言うたらまあまあやな。みんな一緒はあかん』って」
 
家族全員が同じ器を年中使っていて、箸立てには同じのが並んでいる。もしかしたらそれは、食べることそのものを大切にしていないということなのかもしれません。とはいえ、なかなかそこまでは気が回らないもの。取り入れていくには、どうしたらいいのでしょうか?
 

村田 吉弘さん

 
最初にひとつだけちゃんとした和の器を買ってみたらいいんです。日本には備前、信楽、いろんな焼き物があるんやから。お金を出して一個買うと、『これは2500円もするわ、高いな』『これよりウチにあるほうがええわ』って、だんだんほかのものが気になって、自然と食器が揃ってきますよ。もちろん、新しいものを取り入れていくのもいいんです。でも、日本の風土や日本人の気質に合った文化を大切にすることは、地に足の着いた暮らしにつながるはずですよ
 
 
【いよいよ次週は実践編。日本料理は実は簡単!? ヘルシーでおいしい、日本の伝統の取り入れ方を村田さんにうかがいます。】

 

【今週更新!きのこで菌活。】

四季折々の変化を楽しむ「日本食」。健康維持も季節ごとに考えていきたいものですね。楽しい食事や生活からストレスをオフしたり、しっかりと栄養素を摂取して叶える美肌づくりを始めましょう!

今週の「きのこで菌活。」を読む ▶︎